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2026/07/31
180日の壁を越えたいなら―「簡易宿所」という選択肢を徹底解説

今回は、届出民泊の最大の制約である年間180日ルールを越えて通年営業を目指す方に向けて、旅館業法に基づく「簡易宿所営業」という選択肢を解説します。民泊事業の収益性を本格的に高めたい方にとって、避けて通れないテーマです。
住宅宿泊事業と簡易宿所は何が違うのか
どちらも「住宅規模の建物にゲストを泊める」という点では似ていますが、制度上はまったく別物です。住宅宿泊事業(届出民泊)は、あくまで「住宅」を活用して宿泊サービスを提供する制度であり、都道府県等への届出で始められる代わりに、年間営業日数が180日以内に制限されています。
一方、簡易宿所は旅館業法に基づく「営業許可」を取得して営む宿泊業です。ホテル・旅館と同じ旅館業の一形態であり、営業日数の制限はありません。365日フル稼働が可能になるため、同じ建物・同じ単価でも、売上の上限が理論上2倍になります。稼働率を高められる立地であれば、収益性の差は歴然です。
ただし、「許可」は「届出」よりもハードルが高く、建物・設備・立地に関する要件をクリアする必要があります。この違いを正しく理解することが、転換判断の第一歩です。

最大の関門①:用途地域
簡易宿所への転換で最初に確認すべきは、建築基準法上の用途地域です。届出民泊は「住宅」の扱いのため住居系の地域でも営業できますが、簡易宿所は「ホテル・旅館」系の用途として扱われるため、営業できる用途地域が限られます。第一種・第二種低層住居専用地域や第一種中高層住居専用地域などでは原則として営業できず、この場合、どれだけ建物を改修しても簡易宿所化はできません。
つまり、転換を検討する順番は「建物の改修計画」よりも先に「その場所で許可が取れるのか」です。用途地域は自治体の都市計画情報で確認できますが、境界付近の物件や条例による特例もあるため、早い段階で自治体の担当窓口に相談することをおすすめします。
最大の関門②:建物と設備の要件
用途地域をクリアしたら、次は建物側の要件です。簡易宿所の許可には、旅館業法に基づく構造設備基準を満たす必要があります。客室の延床面積の基準、採光・照明・換気の確保、適切な数の洗面設備やトイレなど、自治体の条例で細かな基準が定められています。
さらに重要なのが消防設備です。旅館業の建物は消防法上の扱いが住宅よりも厳しくなり、自動火災報知設備や誘導灯、消火器などの設置が求められます。建物の規模や構造によって必要な設備は変わるため、所轄消防署への事前相談は必須です。
また、建物の用途を住宅から旅館等へ変更する場合、規模によっては建築基準法上の用途変更の手続きが必要になるケースがあります。既存の建物が現行の建築基準に適合しているかどうかも含めて、建築士などの専門家を交えた確認が欠かせません。このあたりは、建築の知識と宿泊業の実務の両方が関わる領域であり、私たちのような建築・宿泊の両面を扱う事業者の出番でもあります。

費用対効果をどう判断するか
簡易宿所化には、設備工事費や手続き費用など、届出民泊より大きな初期投資がかかります。判断の軸はシンプルで、「180日を超えて営業できることで増える利益が、転換にかかる投資を何年で回収できるか」です。
例えば、届出民泊としてすでに運営していて、180日の上限を毎年使い切り、それ以上の予約需要を断っている状態であれば、転換のメリットは大きいと言えます。逆に、現状で稼働が伸び悩んでいるなら、先に取り組むべきは営業日数の拡大ではなく、稼働率と単価の改善です。
また、改修費用を抑える工夫も重要です。構造設備基準を満たすための工事は必須ですが、内装の美観については、全面リフォームではなくリペアによる部分補修を活用することで、投資総額を圧縮できます。「基準適合には投資を惜しまず、美観はリペアで賢く整える」というメリハリが、回収期間を短縮するコツです。

どちらを選ぶべきか―判断の目安
整理すると、届出民泊が向いているのは、初期投資を抑えて小さく始めたい方、住居系地域の物件しか持っていない方、副業的に運営したい方です。一方、簡易宿所が向いているのは、用途地域の条件を満たす物件を持ち、通年の宿泊需要が見込める立地で、事業として本格的に取り組みたい方です。
また、「まず届出民泊で始めて、需要を確認してから簡易宿所に転換する」という段階的な戦略も有力です。実際の予約データという何よりの根拠を持って投資判断ができるため、リスクを抑えながら事業を育てられます。ただしその場合も、将来の転換を見据えて、用途地域の確認だけは物件選びの段階で済ませておくべきです。
まとめ
180日ルールの壁を越える簡易宿所への転換は、収益性を大きく高める可能性がある一方、用途地域・構造設備・消防という3つの関門をクリアする必要があります。重要なのは、改修に動く前に「その場所で許可が取れるか」を確認する順番を守ることです。私たちSATは、建築の視点での適合性確認、リペアを活用した低コストの改修、そして宿泊事業の運営管理まで、転換の検討から実行までを一貫してサポートしています。180日では物足りなくなってきた方、これから本格的な宿泊事業を目指す方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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