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2026/10/26
リノベ投資を守る防波堤。民泊の「地震保険」加入の落とし穴と、保険料の経費計上の考え方

古民家や空き家を再生して民泊を始める際、リノベーションには数百万円から、規模によっては一千万円を超える費用がかかることもあります。こうして大きな投資をした建物を、万が一の災害からどう守るか。その備えとして欠かせないのが保険です。
ところが、「火災保険に入っているから大丈夫」と考えている方が意外と多くいます。実は火災保険だけでは、地震による損害はほとんど補償されません。今回は、民泊を運営するうえで知っておきたい地震保険の基本と、民泊ならではの注意点、そして保険料の経費計上の考え方を整理します。
火災保険では「地震による損害」は補償されない
まず押さえておきたいのは、火災保険では、地震・噴火・津波を原因とする損害が補償の対象外になっているという点です。
たとえば、地震で建物が倒壊した、地震の揺れで火事が起きて家が燃えた、地震による津波で建物が流された。こうした損害は、たとえ「火事」であっても、原因が地震であれば火災保険からは保険金が支払われません。
地震による損害に備えるには、地震保険に加入する必要があります。

新潟は地震と無縁ではない
新潟県は、これまでに大きな地震を何度も経験してきました。2004年の新潟県中越地震、2007年の新潟県中越沖地震では、多くの住宅が被害を受けました。2024年の能登半島地震でも、新潟市の一部で液状化による住宅被害が発生しています。
古民家は、建てられた時代の基準で造られているため、現在の耐震基準を満たしていないことが少なくありません。多額の費用をかけてリノベーションした建物だからこそ、地震への備えをしっかりと考えておく必要があります。
地震保険の基本
地震保険には、いくつかの決まりがあります。
火災保険とセットでしか加入できない
地震保険は単独では加入できず、火災保険に付帯する形で加入します。すでに火災保険に入っている場合でも、途中から地震保険を付けることができます。

保険金額は火災保険の30〜50%の範囲
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30〜50%の範囲で設定します。建物は5,000万円、家財は1,000万円が上限です。つまり、地震保険だけで建物を元通りに建て直す費用をすべてまかなうことは難しく、生活や事業の再建を支えるための補償という位置づけです。
損害の程度に応じて保険金が支払われる
保険金は、損害の程度を「全損」「大半損」「小半損」「一部損」に区分し、その区分に応じた割合で支払われます。実際の修理費用の全額が支払われるわけではありません。
民泊ならではの落とし穴:「居住用」でないと加入できないことがある
ここが、民泊を運営する方に特に知っておいてほしいポイントです。
地震保険は、住宅として使われている建物(居住用の建物)と、その中の家財を対象とした制度です。そのため、建物の使い方によっては、地震保険に加入できない場合があります。
たとえば、家主が同じ建物に住んでいる家主居住型の民泊であれば、居住用の建物として地震保険に加入できるケースが多いと考えられます。一方で、誰も住んでいない家主不在型の民泊専用の物件や、旅館業の許可を取って宿泊施設として使っている建物は、「居住用」と判断されず、一般の地震保険の対象にならない可能性があります。
こうした建物の場合は、事業用の火災保険に、地震による損害を補償する特約を付けるなどの方法を検討することになります。ただし、事業用の地震補償は、引き受けの条件が厳しかったり、保険料が高くなったりすることがあります。
さらに注意したいのが、火災保険そのものの扱いです。住宅用の火災保険に入ったまま民泊を始めると、建物の使い方が契約時と変わったことになり、保険会社に知らせていなければ、いざというときに保険金が支払われないおそれがあります。民泊を始める際は、必ず保険会社や代理店に「民泊として使う」ことを伝え、適切な保険に入り直すか、契約内容を変更しましょう。
扱いは保険会社や商品によって異なるため、「自分の物件では何が使えるのか」を、具体的な運営形態を伝えたうえで確認することが大切です。

リノベーション後は「保険金額」の見直しを
古民家を購入した時点で保険に入っていても、その後に大規模なリノベーションを行えば、建物の価値は大きく変わります。購入時のままの保険金額では、リノベーションに投じた費用分が十分に補償されないことがあります。
リノベーションが完了したら、保険金額が建物の現在の価値に見合っているかを確認し、必要に応じて見直しましょう。
また、地震保険には、建物の建築年や耐震性能によって保険料が割り引かれる制度があります。耐震診断を受けて一定の基準を満たしている場合や、リノベーションの際に耐震改修を行った場合は、割引の対象になる可能性があります。耐震改修は、建物の安全性を高めるだけでなく、保険料の面でもメリットがあるのです。
保険料は経費にできる
民泊を事業として運営している場合、事業に使っている建物の火災保険や地震保険の保険料は、事業の必要経費として計上できます。
ただし、いくつか注意点があります。
家主居住型の場合は按分が必要
自分が住んでいる家の一部を民泊に使っている場合は、建物全体の保険料のうち、民泊に使っている部分の割合だけを経費にします。面積の割合などで按分するのが一般的です。
住んでいる部分は「地震保険料控除」
個人が住んでいる部分の地震保険料は、事業の経費ではなく、所得税・住民税の「地震保険料控除」の対象になります。同じ保険料を、経費と控除の両方に使うことはできません。
長期契約の保険料は「その年の分」だけ
複数年分の保険料をまとめて支払った場合、支払った年にすべてを経費にできるとは限りません。その年に対応する分だけを経費とし、残りは翌年以降に計上するのが原則です。
保険料の経費計上の方法は、事業の形態や契約の内容によって変わります。確定申告の前に、税理士に相談しておくと安心です。

保険だけに頼らない「財務防衛」
地震保険は大切な備えですが、それだけで十分とは言えません。地震保険の保険金は、建物を元通りにする費用の一部をまかなうものであり、すべての損害を埋めるものではないからです。
地震に備えるためには、建物そのものを強くすることも重要です。リノベーションの計画段階で耐震診断を受け、必要な補強を行っておけば、被害そのものを小さくできます。耐震改修には自治体の補助制度が使える場合もあります。
また、災害で営業ができなくなった期間の収入の減少に備えて、ある程度の資金を手元に残しておくことも、事業を続けるための大切な備えです。

大きな投資には、相応の守りを
火災保険だけでは、地震による倒壊や火災、津波の損害は補償されません。多額の費用をかけてリノベーションした民泊を守るためには、地震保険への加入を検討することが欠かせません。ただし民泊の場合は、建物の使い方によって一般の地震保険に加入できないこともあるため、運営形態を正確に伝えたうえで、保険会社に確認することが大切です。
保険料は事業の経費として計上でき、耐震改修による保険料の割引もあります。保険と耐震化、手元資金の三つを組み合わせて、大切な投資を守りましょう。
古民家の耐震診断や補強を含めたリノベーションの計画、民泊開業の準備から運営管理まで、㈱SATにお気軽にご相談ください。二級建築士の資格を持つ代表が、建物の安全性と投資の両面から、民泊づくりをお手伝いします。
※保険の加入条件や補償内容は、保険会社や商品によって異なります。具体的な契約内容は保険会社や代理店に、税務上の取り扱いは税理士にご確認ください。
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